固体や液体では,温度が高くなると内部の原子や分子が激しく動き回るので,一般に物体の体積が増える。
気体の場合も,圧力を一定にしておけば,やはり温度とともに体積が増加する。
温度が上がると体積が増えるという現象を熱膨張といい,これは,極めて一般的な現象である。
ただし身近にその例外もある。 → 熱膨張の例外(熱収縮する高分子,0~4℃の水の体積)
温度のとき長さが
であったものが,温度
では長さが
になったとする。このとき, 線膨張率
は次式で定義される。
長さの伸びの割合はだから,線膨張率
は温度
当たりの伸びの割合を表す。
変化後の体積を線膨張率を使って書くと,となる。
ここでは,線膨張率が小さい,すなわちという近似を使っている。このとき,
つまり,体膨張率は線膨張率の3倍になる。 よりやさしい説明
(参考)温度に依存する膨張率
液体の場合も固体と同様に体膨張率が定義できる。
液体を加熱する際には液体を容器に入れて加熱することになるので,まず容器が膨張し,最初は液体の体積が縮んだように見える現象が起こる。
気体は,固体や液体に比べると,圧力により体積が大きく変化する。固体や液体では,体積が一定であると近似できる場合でも,気体ではそうはいかない。
温度を一定にしたときの,気体の圧力 と体積
の間には,
一定
というボイルの法則がほぼ成り立つ。つまり,圧力と体積は反比例し,圧力が2倍になると体積は半分になる。
一方,圧力を一定にしたときの,気体の温度(絶対温度)と体積
の間には,
, すなわち
一定
というシャルルの法則がほぼ成り立つ。(これが,気体の熱膨張を示す関係になる。)
問 常温(
~300 K)で,一定圧力の気体の体膨張率はどの程度か?
(こたえ)
の空気はどの程度膨張するか?
右の写真は,小学校で行われている空気の熱膨張の実験である。
フラスコの口に石鹸膜を付け,手でフラスコを暖めたり,水で冷やしたりして,石鹸膜の動きを観察する。
多くの身近な気体について,ボイルの法則もシャルルの法則も常温付近ではよく成り立つ。これら2つの法則を合わせて,
というボイル=シャルルの法則が成り立つことになる。(補足説明)
さらに,この関係式の比例定数は,気体の種類にはあまり依存せず,分子数(またはモル数)だけに依存する。そこで, モルの気体については,
(理想気体の状態方程式)
という関係が成り立ち,この中のは気体定数と呼ばれる気体の種類に依らない定数になる。
この関係が正確に成り立つ気体を理想気体(ideal gas)という。
現実の気体では,He, Ne などの不活性気体(単原子分子の気体)が理想気体に近いものである。
熱膨張の例題