自然界の力は次の4つに分類される。
ここでは,その力が強い順に書いてある。それぞれの力(相互作用)を簡単に説明しておこう。
この中で,すぐにわかるものは最後の重力相互作用だろう。
これはニュートンの万有引力の法則で表されていたものだが,その後一般相対性理論でより正確な理論になった。
最も弱い力だが,我々は地球という巨大な質量をもつ物体の表面で暮らしているので,かなり大きな力として感じるわけである。動物の筋肉が出せる力も,自分の体重を基準として進化してきたことになる。
では,動物(人間)の筋肉が出す力は,上記4つのうちどれだろう?
筋肉の動きは,化学反応が元になっている。化学反応とは,原子内の電子の状態が変わる反応のことである。化学反応では,原子核は変化せず,その周りの電子の状態が変化する。すると,これは電気の力が元になっていることがわかるだろう。
電気と磁気は互いに関係しているので,まとめて電磁相互作用という。
物体が形を保っている(少々力を加えても,ばらばらの原子には崩れてしまわない)のも,原子・分子の間に働く電磁相互作用のおかげである。
通常の固体なら,両側から力を加えて引き伸ばそうとしても,原子・分子間の引力のため,簡単には変形しない。
2つの物体を接して,さらに近づけようとすると,それ以上は大きな反発力(抗力)が働き,あまり変形しないし,もちろん2つの物体がすり抜けたりもしない。
通常の固体では,原子・分子間の距離がある一定値になるように,原子・分子間力が働いているためである。この力も電磁相互作用である。
重力相互作用を除けば,身近に感じる力はすべて電磁相互作用になる。
強い相互作用は,原子核の内部で働いている力である。
水素原子を除くと原子核には陽子が複数入っているが,陽子同士は電磁相互作用により斥力を及ぼし合う。それにも関わらず,陽子が小さな原子核に閉じ込められているのは,電磁相互作用よりもはるかに強い「強い相互作用」があるためである。
そのため強い相互作用のことを,原子核を作る力という意味で,核力ということもある。
いわゆる「原子力」は,この核力の結合エネルギーを利用するものである。そのため本当は「原子力」ではなく,「原子核力」などというべきである。
「原子力」 という名前なら,ごく普通の電磁相互作用になってしまう。 「原子の火」 というのも,普通の火のことになってしまう。
英語では,atomic power ともいうが,nuclear power の方が普通に使われている。
強い相互作用は,重力や電磁相互作用とは異なり,原子核の大きさ程度の距離でしか働かない。
今日では,陽子などもクォークというより基本的な粒子からできていることがわかっており,グルーオンという粒子を媒介としてクォーク間に強い相互作用が働く。
最後に残った弱い相互作用は,日常的な力というイメージでは説明しにくい。
中性子を1つ取り出して置いておくと,
中性子() → 陽子(
) + 電子(
) + 反電子ニュートリノ(
)
というβ崩壊を起こす。(反電子ニュートリノは,電子ニュートリノ
と同じである可能性もある。)
このような粒子の崩壊の際に,クォークや電子の間には, 粒子(
)を媒介とする弱い相互作用が働く。
弱い相互作用は,強い相互作用よりもさらに短い距離でしか作用を及ぼさない。そのため,通常は(素)粒子の崩壊という場面にだけ登場する。
なお,電磁相互作用と弱い相互作用を電弱相互作用としてまとめて扱う統一理論や,さらに強い相互作用もまとめて扱う大統一理論が作られており,その検証実験が進められている。(重力相互作用まで含めた統一理理論はまだ作られていない。)