斜面の実験

実際に,球を斜面上で転がせると,なかなかまっすぐには転がらず苦労するだろう。
そのときは,右図のような浅く広い溝の中を転がらせるようにすればよい。

この場合,斜面上で静止していた球が,高さ だけ滑らずに落下したときの速度 は,力学的エネルギーの保存則,

         (注)右辺第2項は回転の運動エネルギー

より,
     
になる。
これは,回転を無視したときの値 の85%程度になる。


断面がゆるく湾曲した斜面のかわりに,コの字型のレールもよく使われる。

球の半径を ,溝の幅を とすると,摩擦力によるトルクを考える際の腕の長さは,
     
となる。

運動方程式
     
および,滑らないという条件 から,前と同様に,加速度は
     
となる。
慣性モーメント は,球の半径 を使って, であるから,
     
となる。
であるから,この加速度は平面を転がる場合よりも小さくなる。

特に, すなわち のときは加速度が0になる。これは球を平行な板で挟んだ場合に相当する。

この場合も力学的エネルギーは保存するので(証明はこちら),静止状態から だけ下がったときの速度は,
     
より,

     

となる。これは, よりさらに小さくなる。


(力学的エネルギーの保存)

微小時間 の間のエネルギー変化を考える。
この間に物体は斜面に沿って だけ進み,高さは だけ下がったとすると,
     
などの関係がある。
すると運動エネルギーの変化は次のように書ける。

     

したがって,力学的エネルギーが保存することがわかる。