条件が異なる太陽電池の直列・並列

太陽電池は,いくつかのセルを並列・直列にして1つのモジュールが作られる。
さらに,そのモジュールを並列・直列にして太陽電池のパネルを作る。

各モジュールの特性は,1つのセルと同様であるが,開放電圧は直列数倍になり,短絡電流は並列数倍になる。

以下では,この太陽電池モジュールを単位として,それを並列や直列にした場合を考える。

全てのモジュールが同じ条件であれば,セルの直列・並列と同様で,これはすでに扱った。
そこで,ここでは条件が異なるモジュールを並列や直列にした場合のみを扱う。

並列接続

2つのモジュール1と2を並列に接続しているが,モジュール2は陰になっていたり,汚れていたりして光電流が小さい状態であるとする。

両方のモジュールの電圧は等しいので,並列にした場合の特性は,各特性曲線を電流方向に足し上げたものになる。

このとき,電圧が大きいところでは,全体の電流は正であっても,モジュール2には逆方向の電流が流れることがわかる。
上図では,モジュール2の負の電流は比較的小さく描かれているが,並列の数が増えた場合などに,これが大きな電流になる可能性もあり, 逆電流が流れたモジュールが破壊されてしまうこともある。

このような逆電流を防ぐためには,下図のようにダイオードを並列に入れるとよい。
特性は右図のように悪くなるが,実用上は逆流防止ダイオードは必須である。

直列接続

次に,日光がよく当たっているモジュール1と日陰になったモジュール2が直列になっている場合を考える。

両モジュールの電流は共通であるから,その最大値はモジュール2の短絡電流に制限される。
それ以下の電流について,電圧方向にそれぞれの特性を足し上げれば,直列の場合の特性が得られる。

この特性は,条件が悪いものを直列にした場合とほぼ同じである。したがって,直列にしたモジュールの1つが正常に動作しなければ,他のモジュールすべてが悪い条件になってしまう。すべてが,最悪の条件のものにそろえられてしまうということになる。

この時の個々のモジュールの振る舞いを理解するために,それぞれの太陽電池の特性曲線を図のように単純化して考える。

2つのモジュールを直列にした場合の特性が赤で示されている。

2つを直列にし,負荷抵抗 をつないだときの電圧を,電流を とする。
抵抗がオームの法則に従うなら, が成り立つ。

また,それぞれの太陽電池モジュールの電圧を とする。当然, である。

であれば,太陽電池の電圧は で, となる。
これは,2つのモジュールとも正常な時と同じで,問題はない。

一方, のときは,モジュール1の特性曲線から となるから,
     
である。
なら であるが, が小さいと になる。

汚れや日陰で が小さくなると, が負になる。 が負であると,電源の役割ではなく抵抗と同じになる。
しかも流す電流は小さいので,大きな抵抗となる。

この問題を回避するためには,バイパスダイオードを使う。
これは,太陽電池モジュールに並列にしたダイオードであり, が負になったときには電流を流し, が正のときは何もしない。

バイパスダイオードを付けた場合の太陽電池の特性の模式図を上図右に示してある。
並列接続なので,太陽電池とダイオードの特性を電流方向に加えることにより,これが得られる。

モジュール1, 2ともにバイパスダイオードを持っているとすると,それらの特性は右図になる。
ここでは,先と同様,モジュール2は日当たりが悪いとしてある。

これらを直列にしたとき, のときに先ほどとは違いが現れ, となる。
このとき,モジュール1の電圧 は,
   
により決まる。(このときは, である。)

したがって,バイパス付きの2つの太陽電池モジュールを直列にした場合の特性曲線は,下図のようになる。
1つのモジュールが働かなくても,他のモジュールはほぼ本来の性能を発揮することになる。

直列にするモジュールが2つだけのときは効果が顕著ではないが,直列数が多くなるほどバイパスダイオードが有効であることがわかるだろう。

個の太陽電池モジュールを直列にしたとき,バイパスダイオードが無ければ,1つでも条件が悪いモジュールがあると,全体の電流も小さい になってしまう。
バイパスダイオードがあれば,個の条件が悪いモジュールがあっても,ほぼ 個分の太陽電池モジュールの働きをする。( が 10, が 1 のような場合を考えると,有効さがわかる。)

以上より,実用的な太陽電池パネルには,モジュールを直列にしたときのバイパスダイオードと,並列にしたときの逆流防止ダイオードが必要となり,右図のような模式図で表せるものとなる。