一般に,FETはG(ゲート),D(ドレイン),S(ソース)という3つの端子を持ち,GS間の電圧VGSを変化させることにより,DS間の電流(ドレイン電流)IDを変える。
ここでは,Nチャンネル型JFETのしくみだけを説明する。Nチャンネル型JFETは,
または
という記号で書かれるが,実際の構造は右図のようになっている。
GS間はPN接合になっているが,これに逆電圧をかけるので,ゲートのp型半導体の周囲には空乏層ができる。
DS間にも電圧VDSが加わっているので,DG間の逆電圧はさらに大きくなるため,空乏層はドレイン側で大きくなる。
空乏層に挟まれたn型半導体の部分はチャンネル(水路の意)と呼ばれ,DS間の電圧により電子が流れる。これがドレイン電流IDである。
このチャンネルは,(正孔ではなく)電子を流すものであることから,Nチャンネルと呼ばれる。
一方,GS間はPN接合に対して逆電圧をかけているので,ゲート電流はほとんど0と考えてよい。
トランジスタのBE間は,順方向の電圧がかけられるので,ベース(B)に電流が流れる。FETの場合は,ゲートに電流が流れないのが大きな特徴である。
DS間の電圧VDSを増加させると,ドレイン電流IDも増加するが,ドレイン側の空乏層も大きくなっていく。
VDSがある程度大きくなると,ドレイン側の空乏層がチャンネルをふさぐ形になる。このときの電圧をピンチオフ電圧VPという。
GS間の逆電圧を大きくしていくと,チャンネルが完全にふさがれる点がある。このときのVGSもピンチオフ電圧と呼ばれVPと書くことが多いが,ここではVTと書くことにする。上記のピンチオフは,DG間の逆電圧によるドレイン付近の電界が,このピンチオフ電圧VTが作る電界になったときに相当する。
ピンチオフにより,電流が遮断されるわけではない。ピンチオフ部の抵抗が大きくなるので,DS間の電位差の大部分がピンチオフ部にかかり,電流を流そうとするからである。
ピンチオフが生じた後,さらにVDSを増加させると,空乏層がソース側に広がっていき,絞られたチャンネルが長くなっていく。そのためチャンネルの抵抗は大きくなっていく。
その結果,VDSを増加させても電流IDはほとんど増加しなくなる。この状態を,飽和状態という。
また,このときのドレイン電流を飽和ドレイン電流という。
飽和ドレイン電流の大きさは,VGSの大きさにより規則的に変化する。この性質を増幅回路などに利用することになる。
下図に,JFETの特性を示す。
左は,VGSを一定にしたときの,VDSとIDの関係である。
非飽和領域ではIDはVDSとともに増加していくが,飽和領域に入るとVDSを増加させてもIDはほぼ一定になる。
右は,飽和領域におけるVGSとIDの関係である。これはゲート特性と呼ばれ,増幅回路の設計などの際に基本的に重要となる。