特殊相対論の運動法則

固有時 (proper time)  

運動する物体(質点)の世界線が であるとする。物体の速度が光速度より小さければ,パラメータ としては世界線の長さがとれる。世界線の長さは,前述のように,
     
という不変量から定義される。
は,ニュートン力学における物体の軌跡 )に対応するものである。

パラメータを ではなく,固有時 に変えてもよい。固有時 は,
     , または
で定義される。 光速度 が座標系によらないので, も不変量である。

     
であるから,
      または,    (
という関係になる。ここで, は通常の速度 )で, は速度の絶対値である。

物体と共に動いている座標系では, であり となるから,固有時は物体と共に動いている座標系での時間という意味がある。

以下では,物体の世界線が であるとする。


4元速度 (four-velocity)

ニュートン力学の速度を拡張して,ミンコフスキー空間のベクトルとするには,
        (
で速度を定義すればよい。これを,4元速度(four-velocity)という。
はローレンツ変換の不変量であるから,これが4元ベクトルであることがわかる。

空間部分()については,
       すなわち 
であるから, のときは,通常の速度 と一致する。
一方,第0成分は,
     
である。
なお,4元速度の大きさ(長さ)の2乗は,
     
という定数になり,4つの成分は独立ではない。


4元運動量と運動方程式

4元加速度 で,4元運動量 で定義する。 は物体の質量で不変量である。これらも明らかに4元ベクトルである。

さて,ニュートンの運動方程式は,
      すなわち    (
である。ただし, はニュートン力学の運動量である。

これを一般化した特殊相対論の運動方程式は,
      または    (
となる。ここで,4元力である。

4元力が何者であるのかはすぐにはわからないが,物体の速度が遅くなればなるほど )は通常の力 に近づくものでなくてはならない。特に,(瞬間的に)物体と同じ速度で動く座標系で見ると,物体は静止しており,このときは正確に とならねばならない。このとき第0成分は, であるから, である。

物体の静止系で の全成分が与えられたので,物体が動いて見える座標系へローレンツ逆変換すれば,一般的な結果が得られる。
物体が動いている座標系では, であるから,
     ,    (
となる。ここで,ニュートン力学的な力を 再定義した。物体が動いている座標系では
       すなわち 
であることになる。

また,第0成分は, であるから,
     
であるが, は次のように求めることもできる。
の両辺を で微分すると, (4元速度と4元加速度は直交する) が得られるが,これに を掛ければ,
     
となる。すなわち,
     
となる。


エネルギーと運動量

一方, はエネルギーと関係していることが以下のようにしてわかる。

より, であるから,
     
である。右辺は仕事であるから,エネルギー である。

結局,特殊相対論のエネルギーと運動量は,
     
     
となる。ここでは,相対論的な質量 を使っている。これに対して, のことを静止質量(または,固有質量)ということがある。

より, すなわち,
     
という関係がある。特に,光子のように静止質量 が 0 の粒子では, という関係になる。

粒子の速度 が小さいときには,
     
であるから,
     
     
となり,静止エネルギーと呼ばれる の項を除くと,ニュートン力学の表式に帰着する。