定常波/定在波 (stationary wave / standing wave)

進行波と後退波が重なると,どちらに進んでいるとも言えない波ができる。
たとえば,方向に速さ進む,波長の正弦波と,同じ速さで同じ波長の後退波が重なると,
     
のように,位置の関数と時間の関数が積の形になる。
そのため,位置の関数が0となる場所では時間によらず変位は0になる。このような位置を (node) という。
上式の場合,節の位置は,
      →  →   (は整数)
のように求められ,半波長ごとに節が現れることになる。
節とは逆に,大きい変位が現れる場所を (antinode) という。腹も半波長ごとに現れる。

このような波を定常波(定在波)という。定常波は波の重ねあわせでできるが,その典型的な場合として次の2つの型がある。

境界での反射 (固定端や自由端の境界条件)
弦楽器の弦や管楽器の気柱は,両端で反射されるので,特定の波長,したがって特定の振動数の波動だけが永続的に生じる。(下のシミュレーションを参照)
周期的な境界条件
ガラスコップの縁を叩いたときは,コップの縁の振動(横波)が両側に伝わる波動となるが,波が1周して元に戻ったときの変位が,その場の振動の変位と一致するような波動だけが永続する。このような波動では,コップの縁の長さが波長の自然数倍でなければならなくなる。

いずれの場合も,波動の媒体の長さと定常波の波長に一定の関係が付けられる。
許される波長,したがって振動数は1つではなく無限にあるが,そのうちで最も振動数が低い(波長が長い)ものを基本振動といい,その他のより振動数が高いものを陪(倍)振動という。

陪振動は,基本振動の整数倍になることも多いが,そうとは限らない。
陪振動の振動数が基本振動の2倍,3倍,・・・となるときには,2倍振動3倍振動,・・・という表現も使われる。

定常波の固有振動モード


実際の気柱の共鳴振動や弦の定常波は,上記の固有振動モードを重ね合わせた形になる。
例えば,ギター弦の振動は,撥弦位置により各振動モードの混ざり方が変わり,これが音色の違いとなって現れる。