熱容量と比熱

物体に熱を与えると,(普通は)温度が上がる。
ただし,同じ熱量を与えても,物体の大きさや物質が違うと,温度の上がり方は違ってくる。
与える熱量と物体の温度上昇の関係を与えるのが,熱容量や比熱である。

※熱を加えても温度が上がらない場合については,「潜熱」を参照。

熱容量 ( Heat Capacity, Thermal Capacity )

ある物体に熱量 を与えると温度が 上がるとき,この物体の熱容量 で定義する。

つまり,熱容量は,その物体の温度を1度上げるのに必要な熱量である。
熱容量の単位は, または(同じことだが) となる。

熱容量は,物質ではなく,物体により決まる量であることに注意しよう。

熱容量が大きい物体と小さい物体に同じ熱量を与えると,熱容量が小さい物体の方が温度上昇が大きい。
また,同じ温度の熱容量が大きい物体と小さい物体があるとき,熱容量が大きい物体の方がより多くの熱エネルギー(内部エネルギー)を持っている。

例1  の水の熱容量は, である。  (
    の水の熱容量はこの2倍になる。

例2 熱容量が の物体に の熱量を与えると,温度の上昇は,
       
   になる。

例3  のヒータは,1秒に の熱を出す。
    の水の温度を 上げるには 必要だから,このヒータで の水を加熱すると,
       
   より,1秒に 温度が上がる。(熱が水の外に逃げないとしての話)

(参照) ヒータによる水の加熱実験

比熱 ( Specific Heat ) = 比熱容量

物体の量をある単位量にしておけば,物質により決まる「熱容量」が得られでしょう。

一般に,単位量の物質の温度を1度上げるのに必要な熱量を比熱という。

普通は単位質量当たりの熱容量のことを比熱と呼ぶ。
歴史的に単位質量としては をとることが多く,理科年表などでも という単位で書かれている。

例1 水の比熱は,約 である。

単位量のとり方として,物質量 をとることもあり,このときはモル比熱という。
すなわち, の物質の温度を1度上げるのに必要な熱量がモル比熱である。
モル比熱の単位は, になる。

なお,「モル比熱」の「モル」は,一定量として をとったことを示しているが,それならばモル比熱の代わりにモル熱容量と呼んでもいいだろう。この方が「 当たりの熱容量」という意味がわかりやすいので,モル熱容量という言葉も使われる。
    モル熱容量 = モル比熱


気体の場合は, または という一定量であっても,体積を一定にするか,圧力を一定にするかといった条件により比熱の値は大きく違ってしまう。
そこで気体の場合は,定積(モル)比熱定圧(モル)比熱というように加熱時の条件も明示しなければならない。

例2 空気の定圧比熱は約 ,定積比熱は約 である。

定積比熱 よりも,定圧比熱 の方が必ず大きくなる。定圧にした場合,加熱すると膨張し,外部に対して仕事をするので,温度が上がりにくくなるためである。
定圧比熱と定積比熱の比を比熱比といい,
     
という記号で書かれる。 は必ず1より大きくなる。

例3 空気の比熱比 は約 である。