熱放射の強さをさまざまな温度で
定量的に測定する場合,すべての波長
に対して
反射率=0である完全黒体で実験するのが理想です。
しかし,そのようなものは無いので,代わりに空洞放射の実験が行われました。
これは完全黒体からの熱放射に近いものです。
実験結果は,次のPlanckの公式と見事に一致します。
振動数が
と
の間にある放射の単位体積当たりのエネルギーは,
になります。右図の縦軸はです。ここで,
光速度: ボルツマン定数: プランク定数:
などの定数が使われています。
の関係を使えば,
同様な量を波長
で表すことができます。
右図の縦軸はです。
太陽の表面温度は約6000Kですから,太陽光のスペクトルは可視域にピークを持ちます。
問 これは偶然でしょうか?
Planckは,実験を再現する公式を見つけた後に,光のエネルギーがの整数倍であれば この公式が導き出せることを示しました(1900)。これが,量子論の先駆けとなる大発見でした。 Planck定数
は, 量子論で最も重要な基本定数です。
Planckの公式により,それ以前にわかっていた熱放射に関するさまざまな事例や,最近になり精密に測定された宇宙背景放射まで,多くの現象を定量的に扱うことができるようになりました。以下に,いくつかの例を示します。
高温になるにつれて,熱放射は強くなり,最大強度を与える波長は短くなっていきます。このため,熱放射の強度や色を見れば温度がわかります。
例1 サーモグラフィ カメラで撮った赤外線の強度分布を色分けして表示したもの。高温の部分ほど強い赤外線が出るので,温度分布を画像として見ることができる。
例2 溶岩や製鉄所で溶けた鉄の色を見ると,その温度がわかる。(経験を積めば)
例3 赤い星,白い星,青い星の順に表面温度が高くなっていく。
(参考1)熱放射を利用した温度計
・全放射温度計 通常,赤外線強度を計測し温度を求めます。体温計もあります。
・色温度計
・輝度温度計