弦を伝わる横波の速度

張力,線密度 の弦を伝わる横波の速度 は,

     

で与えられる。

これを導くには,弦の微小部分に対するニュートンの運動方程式から波動方程式を導き,波動方程式の係数から速度を求めるのが一般的な方法である。
しかし,ここではより簡単に横波の速度を求める方法を紹介しておく。


弦(ひも,ロープ,ばね)の横波が,下図のように右方向に進んでいるとする。このとき,変位の形は変化せずにそのまま右方向に速さ で進んでいく。(変位は周期的なものでなくてもよい。)

これを,波と同じ速さ で進む観測者から見ると,変位の形状は不動になるが,弦自身が左向きに動いていく。
これは,丁度,曲がったガラス管の中に紐を通して,その紐を引いたような感じになる。

※弦の変位が小さいという近似では,弦の各点の速さもであると考えてよい。

ガラス管が無くても,このような運動ができるための条件は以下のようになる。

弦のごく小さな部分を取り出して考えると,半径 の円弧と考えることができる。このをその位置の曲率半径という。
すると,この部分は半径,速さ の円運動をすることになるので,この部分の質量を とすると,必要な向心力は, である。

この向心力は,小さな円弧の両端に加わる張力 の合成により与えられなければいけない。円弧の中心角を とすると,この合力は,
     
となる。

弦の線密度(単位長さ当たりの質量)を とすると,微小な弦の質量は となる。したがって,
     
でなくてはならず,これより波の速さ は,
     
であることがわかる。