両端が固定された弦の振動

ここでは,両端が固定された一様な弦の振動を考える。

弦の変位 は,波動方程式

(1)
を満たす。ここで, は弦を伝わる横波の速さで, 弦の張力を,弦の線密度 とすると, で与えられる。 (導出はこちら

波動方程式(1)の一般解は,進行波と後退波の重ね合わせであり,

(2)
と書ける。(導出はこちら

境界条件として が固定端であるとする。 したがって, である。

まず, より, であるから, (2)は,

(3)
となる。

次に, において, と書くと,
     
となるから, 周期の関数であることになる。

初期条件として,
   初期変位 
   初期速度 
の場合を考える。

まず,前者からは,

(4)
が得られる。

また,速度は であるから,後者より , したがって, となる。
ここで,(3)をみると,定数 は0としても一般性を失わないことがわかる。したがって,
     
としてよい。すなわち は奇関数である。すると(4)より,

        (5)
となる。は,区間 でしか与えられていないが, 周期の奇関数であるので, これで完全に が決まる。

また が奇関数であることから,(3)は,

(6)
と書くことができる。これに,上記のように決めた を使えば,境界条件と初期条件を満たす解の具体形が得られる。
(注) 周期の奇関数であると考えておくと,
     
と書けることになる。

さらに具体的に,初期の弦の形 が下図の赤で示したものである場合を考えよう。 これは,弦のある位置を引っ張り,そこで離して振動を開始させることになるので,ギターの弦を弾く場合に対応している。

は,区間 では の半分に等しく, 周期の奇関数であることから, 上図の青で示したグラフになる。
(6)は,進行波,後退波ともに同じ のグラフを速さ で平行移動したものになることを示しているので,それらを描き,合成すれば,下図のように弦の振動の具体形が得られる。

ギター弦の振動     

(参考)ギター弦は実際このような形で振動している。この形は,基本振動,2倍振動,3倍振動,・・の特定の重ね合わせになっている。
  摩擦があるので振動は減衰していくが,その際に高い倍音の方が減衰が速いので,撥弦後しばらくすると基本振動に近い形になる。


(補足)上記では,すべて数式によって解を求めたが,少し慣れると,以下のように図形的に考えることができるようになる。

まず,初速度0であるから,進行波と後退波の形は同じで,時刻 には完全に重なっており,弦が存在する部分では初期変位の半分になる。

固定端では,進行波と後退波は回転対称になる。弦の両端で常に回転対称になることを考えると,上記のになることがわかる。